スタートアップにとって、ESGの実践はなかなかハードルが高い印象かもしれません。実際、成長を優先するあまりESGを後回しにする企業も少なくないようです。
一方で、最近はESGの実践をできるだけ早いステージから始めるべきだと考えるテクノロジースタートアップも増えてきました。MPower Partnersが投資するWovn Technologies株式会社もその1社です。同社のESGに対する姿勢は、取締役CFOである藤原健氏の言葉にも表れています。
「ステージや上場の有無にかかわらず、ESGはあらゆる企業にとって重要なテーマです。メンバーや会社の意識を変えて環境を作るのには時間がかかり、上場の直前に付け焼刃でできるものではありません。だからこそ、ESGの実践は小さく早めに始めるべきなのです」
Wovn Technologies株式会社 取締役CFO 藤原健氏
そんなWOVNでは実際にESGをどう位置づけ、いかに実践しているのでしょうか。話を聞いてみると、ESGがビジネスと組織の屋台骨となっていることが見えてきました。
ESGはビジネスの目的であり、成功を支える土壌
WOVNは「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」というミッションのもと、ウェブサイトやアプリの多言語化ソリューションをSaaS(サービスとしてのソフトウェア)として提供しています。そんな同社にとって、ESGは単にスローガンとして掲げるものではありません。
そもそもWOVNが目指すのは、母国語にかかわらず情報を平等に得られる世界です。「言語による情報の不平等をなくすことこそDEI(多様性、公平性、包括性)の実現であり、私たちのミッション自体がESGのSに合致しています」と藤原氏が話すように、ESGは同社のビジネスの目的だと言えます。
さらに同社の躍進を支えるのが、多様性に富むチームです。現在WOVNで働くメンバーの国籍は25か国以上。「多様なメンバーが活躍するからこそ、事業の成長やサービスの向上が実現します。だから私たちはDEIを非常に重視するのです」と、藤原氏は説明します。
つまりWOVNにとってESGとは、ビジネスの目的でありながら、それを達成するための土壌でもあるのです。
公募で全社横断のESGチームを発足
2021年にMPowerから出資を受けたあと、WOVNではESGのプロジェクトが正式に発足しました。その際大事にしたのは、全社を挙げて取り組むための環境作りです。
ESGはミッションとつながっているからこそ、すべてのメンバーに意識してほしい。藤原氏はそんな思いのもと、「コーポレート部門や経営層だけで形式的に進めるのではなく、ESGに積極的に取り組みたいメンバーと一緒に考えていける場を全社横断で作りたかった」と振り返ります。
こうした背景から、プロジェクトチームを結成する際は全社からメンバーを公募。藤原氏によると、これは全社的なコラボレーションを推進するうえでもよい機会だったそうです。「ハイブリッド・リモートワーク環境では、部門を越えたインタラクティブなコミュニケーションが不足しがちです。WOVNではESGをきっかけに、部門を越えてディスカッションを進められるようになりました」。
ESGの実践により、メンバーのエンゲージメントが向上
プロジェクトチーム発足後は、S以外の領域にも取り組みを広げています。
たとえばEの領域では、電力消費量を測ってCO2に換算し、その排出量の削減を目指しています。ほかにも最近のオフィス移転の際には、中央スペースで使う床材や椅子にリサイクル可能な素材を選びました。藤原氏はこうした経験を経て、「これまで何も気にしていなかった部分に、小さい点も含め改善の余地がありました。ESGに取り組んでいたからこそ、気づくことができたんです」と話します。
ESGの実践は、組織にもよい影響を与えています。「目指す未来について、全社的に細かいレベルで共有できるようになってきた」と話すのは、取締役副社長COOの上森久之氏です。「オフィスの素材選びから働き方にまで、その意識が反映されています。さらに仕事だけでなく、メンバーは普段目にするニュースでもESGやSDGsというワードに注目するようになりました」。
こうした意識の変化によって、メンバーのエンゲージメントも向上しました。藤原氏は、「ESGの実践がWOVNの存在意義、いわゆるパーパスを意識するきっかけとなったことで、結果的にメンバーの仕事に対するモチベーションが高まりました」と話します。さらに、この効果は全社横断のチームで進めたからこそだと実感しているそうです。
ESGの重点課題と施策をウェブサイトで公開
こうしてESG実践に本格的に取り組み始めたWOVNでは、現在各領域でさまざまな施策を推進しています。
なかでも同社の幹となるSの領域では、ウェブアクセシビリティの改善を開発ロードマップに組み込み、言語だけでなく色の識別が難しい人にも配慮したカラースキームを採用するなどの改善を行っています。
また信頼性の高いプラットフォームを構築するために、取締役会の直下に独立組織としてサイバーセキュリティーオフィスを設置し、個人情報保護法や、GDPRやCCPAなどのグローバルなプライバシー関連法令への準拠を進めています。そのほか、引き続きシステムの安定稼働のために品質機能の改善や開発も行っていく予定です。
もちろんEとGの取り組みも強化しています。領域ごとの重点課題や施策について詳しくは、5月24日に公表された「WOVNのサステナビリティの取り組み」をぜひご覧ください!
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本日(2022年5月31日):「グローバル & デジタル」「ESG」「クリエイティビティ」「メディア」をキーワードに、GLOBALIZED 2022のイベントに是非ご参加ください。
WOVNのESG関連ページ:
- WOVNサステナビリティページ
- 2022年5月24日のプレスリリース:WOVN、サステナビリティの取り組みを公開
- 2021年10月5日のブログ:ついにキックオフ。「WOVN ESG プロジェクト」とは?