ついにこのシリーズも最終回です。ここまでESGの定義からロードマップの共有方法まで一気に解説してきましたが、最後は皆さまが自社でESGを実践する際に役立つリソースをまとめて終えたいと思います。
ESGの実践に活用できるフレームワーク
ESGを実践する多くの企業では、複数のフレームワークを活用しながら戦略を策定しています。
財務や会計などの分野とは異なり、ESGの実践で使うべきフレームワークや基準は特に決まっていません。むしろ、ESGやサステナビリティに関するさまざまなフレームワークを活用できるため、企業の多くはそれらを「いいとこ取り」したモデルを使ってアクションや目標の設定、成果の測定、進捗に関するコミュニケーションを進めています。特に、重要なマテリアリティの抜け漏れがないかのチェックにフレームワークを活用すると効率的です。
ESG実践サイクルで使える代表的なフレームワークは次のとおりです。各フレームワークの有用性は、ESG戦略策定プロセスのフェーズや企業の特性・目標によって変わりますので、自社に合うものを選んで活用してください。各フレームワークへのリンクはこちらからご利用いただけます。
領域ごとのアクションや目標設定に役立つリソース
ここでは、環境、社会、ガバナンスの領域ごとに、アクションや目標を設定する際に役立つリソースをまとめました。
Environmental(環境)
二酸化炭素排出量の測定
まずは大まかな排出量を無料で測定できるツールを使ってみましょう(Carbon Trust、ON A MISSION,、Planetly、Sustain.Lifeなど)。
また、排出量ゼロを目指す創業者のコミュニティもあります。メンバーに無料で排出量計算機を提供しているLeaders for Climate Actionのほか、Tech Zeroもおすすめです。
有料のツールを使うと、より正確な排出量を測定できます。小規模な企業でも使いやすいのは次のソリューションです。
- グローバル:Pathzero、Plan A、Planetly、Supercritical
- 日本国内:Asuzero、Zeroboard、booost technologies*
*大企業向け
自社の排出量削減
ペーパーレス化、電力使用量や冷暖房温度の最適化など、自社の各拠点で実行しやすいアクションを考えてみましょう。たとえ小さなものでも、従業員に行動を促すことが大切です。
また大手データストレージ・サーバーは、二酸化炭素排出量を減らすためのさまざまなソリューションを提供しています。自社で使っているサービスをチェックしてみてください(Google Cloud、Microsoft Azure、AWS)。
Social(社会)
DEI
多様かつ公平で包括的なスタートアップを作る方法はこちらの記事にまとめられています。
働き方と福利厚生
スタートアップで効果的なリモートワークを実践するコツはこちらを参考にしてください。福利厚生は国や地域の法律や慣例によりますが、アメリカの場合はこちらの記事が参考になります。
倫理リスクへの対応
倫理など重要な設計要素にかかわるリスクを考える際は、EthicalOSのツールキットが役立ちます。また、潜在的な倫理上の問題などAIのリスクをより理解&評価するためにすぐ使えるツールもあります。
Governance(ガバナンス)
取締役会の構成
まずは社外取締役も含めた現在の構成をマップ化し、理想的なスキルセットをマトリクスで可視化してみましょう。実際に、東京証券取引所が定めたコーポレートガナバンス・コード(2021年6月版)でも、上場企業に取締役会のスキル・マトリックスを公表するよう求めています。
そのうえで、ビジョンに合った取締役会にする方法を考えます。適切な役員候補を見つけるには、ネットワークを広げることが大切です。
データプライバシーとセキュリティ
まずは自社のデータプライバシーとセキュリティポリシーが個人情報保護法に沿っているか確認しましょう。また、同業他社が公開している内容と見比べてみるのもおすすめです。新たに作成・公開する際は、Ethical OSやTech Risk Zonesなどのフレームワークが役立ちます。
皆さまのご意見をお寄せください!
これまで9回にわたって、ESG実践の全貌をお伝えしてきました。ESGについてここまで包括的に解説したものは日本に存在しなかったため、今回初めてESG実践の全体像やポイントを理解できたという人も多いのではないでしょうか。
ESGのアプローチやアクションは、企業のステージや成熟度、業界、場所などによって異なります。そのため、このPlaybookでは特に決まったアプローチを推奨せず、全般的なヒントの共有を中心にまとめました。今後MPowerとともに自社のESG戦略を策定していきたいスタートアップの皆さまは、ぜひこちらからご相談ください。
Playbookの本体はNotionで公開しており、メルカリ、ラクスル、Canvaなど国内外でESGを実践する企業の事例も充実しています。内容は随時更新し最新情報を常に反映する予定です。皆さまからのフィードバックもお待ちしています!