これまでの解説では、ESG、なかでも特に4大テーマを実践する意義を押さえてきました。ここからはいよいよ、自社でESGを実践するための具体的なプロセスを見ていきましょう。
私たちMPowerでは、ESGをできるだけ早くから実践することがベストだと考えています。ESGの視点を早い段階で企業のミッション、価値観、アクションに組み込めば、そこから浮かび上がる優先事項がその企業の文化を形作るからです。
また次の言葉にもあるように、ESGは短期で実践できるものではありません。何度もサイクルを繰り返す長い道のりになることを頭に入れておきましょう。
「ステージや上場の有無にかかわらず、ESGはあらゆる企業にとって重要なテーマです。メンバーや会社の意識を変えて環境を作るのには時間がかかり、上場の直前に付け焼刃でできるものではありません。だからこそ、ESGの実践は小さく早めに始めるべきなのです」
Wovn Technologies株式会社 取締役CFO 藤原健氏
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1回のサイクルにおけるざっくりとしたステップは次のとおりです。
ESG実践の責任者を任命する
ESGの実践は、プロセスの責任者を決めることから始まります。責任者は次の要件を満たす人がベストです。
- 経営幹部である
- ESGに時間を割く余力がある:スタート時は週2〜3時間、月によってそれ以上の場合もあり、その時間はスタートアップが成長するにつれて増える見込みです。多くの企業では最終的にサステナビリティやESGの専任担当を設けています。
- さまざまなステークホルダーを動員できる:社内でも、あらゆる部門や階層の従業員に対して影響を持つ人が望ましいでしょう。
- ESGに対する興味や推進する意欲がある
ESGの優先事項を特定する
責任者を決めたら、次はメインとも言えるマテリアリティ(優先課題)の特定です。
マテリアリティ(優先課題)分析とは、企業が自社とそのステークホルダーにとって特に重要な課題を特定するアプローチです。広く使われているGlobal Reporting Initiative(GRI)では、マテリアリティを次のようにわかりやすく定義しています。
「組織が自社だけでなく、ステークホルダーや社会全体に対して価値を生み、保ち、広げる力に何かしら影響するトピック。その価値には経済的(企業の財務指標など)、環境的、社会的なものが含まれる」
企業が目を向けるべき課題は数多くありますが、優先すべきは企業とステークホルダーの双方が特に重要だと考えるものです。このため「マテリアリティ」は単に「優先課題」とも呼ばれます。
マテリアリティ分析には5つのステップがあります。その具体的な中身は次の記事で見ていきましょう。