各マテリアリティにおけるアクションの目標とメトリクスを決めたところで、次はそのESGロードマップを関係者に共有していきます。戦略やロードマップの策定はESG実践の肝ですが、主なステークホルダーの足並みを揃えることもまた大切です。しっかり練られた体系的なコミュニケーション戦略があれば、コミュニケーションの質が上がり、有意義なフィードバックを得られるようになります。
今回は「実践内容を共有する」です。
まずは、自社でESGを実践するうえで、なぜコミュニケーションが重要なのかを理解しておきましょう。考えられる理由としては次のようなものがあります。
- ESGを自社の優先事項として、その戦略や計画の策定に多くのリソースを費やしているため、ステークホルダーに取り組みを理解してもらう必要があるから
- 創業者、直属の部下、そして組織全体への説明責任を果たせるから
- 進捗に対して、意見やフィードバックを集められるから
- ESGとその関連施策について戦略的にコミュニケーションすることで、社内外のステークホルダーに対してそれが本当に重要だと伝えられるから
コミュニケーションプランには「何を」「誰に」「いつ」「どのように」の要素を組み込むと、より効果的な内容になります。
What(何を)
- 伝えたいのはESGロードマップの一部ですか?それとも戦略の全貌でしょうか?その理由は何ですか?
- コミュニケーションのゴールと目的は何ですか?
社内コミュニケーションのヒント
ESG戦略の全貌を共有するのがベストです。ESG戦略やロードマップを構築するに至った経緯や、背景にあった考え方を説明しましょう。
社外コミュニケーションのヒント
コミュニケーション戦略や計画を立てる前にステークホルダーと話し、どの程度の情報が求められているのか把握しましょう。ステークホルダーによって関心度が異なる場合は、コミュニケーション手段を使い分ければ効果的に対処できます(のちほど詳しく説明します)。
Who(誰に)
- 伝える相手は誰ですか?
- ESG実践のプロセスに含まれる人は誰ですか?含まれないのは?
社内コミュニケーションのヒント
従業員は最も重要なステークホルダーであり、ESG実践の担い手です。プロセスの全体を通して、情報を全社に共有しましょう。
社外コミュニケーションのヒント
対象となるグループごとに最適なアプローチ方法やチャネルについて、戦略的に考えてみましょう。
When(いつ)
- 最初のコミュニケーションのあと、どれくらいの頻度で進捗を共有しますか?
- コミュニケーションは、定期的な業績報告(例:四半期または年2回の投資家報告など)のタイミングと合っていますか?
社内コミュニケーションのヒント
従業員には定期的に進捗共有しましょう。ESG実践に取り組む従業員がいれば、その場に参加してもらいます。通常のチームミーティングに組み入れてもよいでしょう。
特定のアクションを推進する従業員とはこまめに連絡を取り合い、進捗についてフィードバックを得ることが大切です。
社外コミュニケーションのヒント
共有する内容が決まったら、善は急げです。IPOのような大きなマイルストーンが迫っている場合は、それより前に余裕をもってESG戦略やロードマップを発表し、ステークホルダーが考える時間を確保しましょう。
How(どのように)
- コミュニケーションのチャネルは、キーメッセージやステークホルダーのニーズと合っていますか?
社内コミュニケーションのヒント
すでに社内にあるコミュニケーション手段を活用しましょう。新たな手段(例:社内報など)を作るのは、どうしてもそれが必要なときだけです。
社外コミュニケーションのヒント
コミュニケーション手段は各ステークホルダーの好みに合わせる方がよいものの、それが一番効率的だとは限りません。次善策として、特に重要なステークホルダーを洗い出し、その人たちが望む手段を優先しましょう。
優先順位の低いステークホルダーに対しては、汎用的なコミュニケーション手段(Substack、LinkedInやInstagramの投稿など)を使うのがおすすめです。
各ステークホルダーとのやり取りで得たフィードバックをロードマップに反映すると、ようやく1つのサイクルが終わります。
ここまでESG実践の具体的な中身をお伝えしてきましたが、いよいよこのシリーズも残すところ1回となりました。最後はESGの実践で役立つリソースをまとめて締めくくります。