2022年2月にメルカリ代表取締役CEO 山田進太郎様、Sustainability Teamマネージャー 田原純香様、Sustainability Teamメンバー 山下真智子様にインタビューさせていただきました。
ESGは自社の存在意義に直結する
メルカリにとってESGとは何か、そしてなぜ重要かお聞かせください。
メルカリ山田CEO:もともとメルカリは会社創設前に自分が世界一周をしていた時に、先進国とは違う新興国の資源や機会の格差や難しさを感じたことから始まったんです。特にSDGsは自社との親和性が高いと思っています。メルカリのミッションも循環型社会と直結していますから、ESGというグローバルの基準に合わせて発信していくことで、より理解されやすいと思います。
ESGは企業にとって中長期の成長の核になるものですし、経営手法でありマネジメントのあり方そのものだと思っています。だからESGという切り口で経営を見ていく中で、事業機会やリスクを特定することで戦略面で様々な先手を打ちやすくなります。とりわけ、ESGのフレームワークは中長期的な思考を促してくれると思います。
ESGは社内外でのエンゲージメントと信用力を高める
ESGの取組みを推進することにより、どのようなメリットを感じられているでしょうか?
メルカリ山田CEO:ESGのフレームワークを使うと、マルチステークホルダーの視点で経営を考えられるようになり、また中長期の視点から戦略を考えることにつながり、意思決定の質も向上すると思います。
さらにESGは世界共通のフレームワークなので、これを使えば社内外のステークホルダーにメルカリの社会的意義を知ってもらいやすくなると思います。例えば、採用力や社員のエンゲージメントが高まり、株主その他から得られる信用も強固になると思います。
またメルカリは一次流通(メーカー等)あっての二次流通ですから、ESGに積極的に取り組むことで提携先との取引も進めやすくなるというメリットもあるかもしれません。
サステナビリティレポートに記載されている以外のESGに関わる取り組み
ESGのマテリアリティと連携する主な活動や行動を教えて頂けますでしょうか?
メルカリ山田CEO:概略はサステナビリティレポートに記載しているのですが、循環型社会の実現/気候変動への対応について簡単に定量化できないものの、隠れたポジティブインパクトは大きいと考えています。今はそうしたインパクトを何らかの方法で測定しもっと打ち出していくことを考えています。他方、自社のGHG排出量等のネガティブインパクトについては、目標を定めてSBT認定を取得していくなど、きちんと対処していくつもりです。
ダイバーシティー&インクルージョンの実現については、さまざまな取り組みを行っていますが、柔軟なワークスタイルに対応すること(リモートワークや転居など)で、D&Iにも対応できると思っています。
さらに、地域活性化については自治体との包括提携を進めていますし、メルカリ寄付等の取り組みも行っています。最近始めたメルカリShops(スマホ1つで誰でも簡単にネットショップを開設できるEコマースプラットフォーム)やメルペイなども地域活性に活用できます。循環型社会、D&Iに加えて、地域活性化もひとつの柱になりますね。
経営戦略のフレームワークとしてのESG
3年にわたるESGの取り組みから学んだことは何でしょうか?
メルカリ山田CEO:チャリティーという意味での企業の社会貢献、いわゆるCSRとは全く異なる経営の意思決定・戦略策定みたいなところに、ESGが活用できるということですね。
今までもポジティブ・インパクトを定量化しようと試みてきましたが、これはなかなか難しいところです。メルカリが社会に与えるポジティブインパクトを精緻に測るのは本当に難しいので、これから自分たち独自のやり方を作らねばと考えているところです。
ESGを中長期の競争力の源泉に
ESGに取り組みたいと考えているスタートアップ起業家の方たちに対して、どのようなアドバイスがありますか?
メルカリ山田CEO:まずはESGというフレームを使うことで、中長期のことが考えやすくなったり、マルチステークホルダーという視点で事業を捉えることができます。そこからいろいろな事業機会やリスクを見つけられるということが、スタートアップにとっては大きなメリットだと思います。
また、ESGを上手に使って学び、結果を社外に公開していくことで、社内外での調達力(人材や資金や信用)が高まると思います。アーリーステージの企業も、例外ではないはずです。メルカリの場合は徐々に進めてきたのですが、こうした利点を理解していれば最初からESGのフレームワークを使った方が良いと思います。
最近では日本でもD&Iに対する課題意識も高まってきていますが、ここに最初から取組むことが企業の競争力を上げることにつながるはずです。外国籍や女性社員の活用など、既存企業より意識的に取り組むことによって、新たな機会を見つけて迅速に動けるので、成功に近づくはず。だからやる価値はあると思います。ダイバーシティーとインクルージョンがない組織は、特に若い人には共感してもらえないのではないでしょうか?そういう時代になっていると思います。サステナビリティも重要な価値観ですよね。
企業が社会における存在意義に立ち返るためのESG
メルカリ田原:最近では嬉しいことに、メルカリのESGに関する取り組みについてを聞かせてほしいという依頼をスタートアップ企業から受けることが多いですね。
メルカリが胸を張って言えることは、メルカリの創業時からの思いが社会的な意義に繋がっていて、それこそがこの会社を経営する意味であるということです。多くのスタートアップが事業を始める時には、お金儲けというよりは、誰かの何かの役に立ちたいと思っているはずです。
そこに今一度立ち返って、自分たちのやりたかったこと、創業のストーリーは何だったかということを明確にすると、おのずとESG経営のフレームワークが、すっとはまってくるのではないでしょうか?アーリーステージなりのWHYや存在意義(パーパス)の部分をはっきりと自覚し、中長期で実現したいことを見つけていくのが良いのではないかと思います。